性犯罪

(1)痴漢、盗撮、公然わいせつ

ア 痴漢、盗撮

(ア) 痴漢や盗撮は、都道府県が制定するいわゆる迷惑防止条例によって規制されています。もっとも、痴漢は、その態様によっては、刑法上の強制わいせつ罪に該当するものがあります
例えば、痴漢や盗撮は、香川県においては、香川県迷惑行為等防止条例第12条違反となり、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が課されます。

(イ) 痴漢や盗撮で逮捕された場合、身体拘束期間の長期化を防ぐべく、弁護人は、勾留却下に向けて、身元引受人の確保、誓約書(現場の駅や電車を利用しないこと等)の提出等をします。そのような準備を行うことで勾留却下になる可能性があります。
勾留決定がなされた場合は、勾留決定に対する準抗告により、身体拘束からの早期釈放に向けた活動をすることもできます。処分については、被害者と示談を行うことで前科前歴などがない場合には、不起訴処分の余地があります。

(ウ) 痴漢冤罪事件の場合に考えられるのは、被害者の女性が、実際に痴漢の被害にあっているが犯人を被告人と誤信した場合(犯人性の誤認)、そもそも痴漢の被害事件が存在しないのに被害にあったと誤信する場合(事件性の誤認)、被告人に対する恨みや報復等により虚偽の被疑事実を申告する場合(虚偽の被疑申告)があります。最大の争点は、被害者女性や目撃者の供述の信用性にあります。
痴漢行為を行っていないにも関わらず、痴漢行為を行ったと疑われた場合には、すぐに弁護士にご連絡してください。

イ 公然わいせつ罪

公然わいせつ罪は、公然とわいせつな行為をした者に成立する犯罪です。「公然」とは、不特定又は多数人が認識し得る状況をいい、実際に認識されたかどうかは問われません。
法定刑は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料です。

ウ 処分について

迷惑防止条例違反や公然わいせつの場合、現行犯逮捕が多くなっています。
公益性の犯罪であることも鑑み、示談が成立しても必ずしも不起訴となるわけではありませんが、示談が成立している場合は不起訴処分の可能性があるため、早期の示談が重要です。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所では、迷惑防止条例違反や公然わいせつ事件において、被害者と示談を成立させ、不起訴処分となった実績を有しております。

(2) 強制わいせつ、強制性交等

ア 強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪

(ア) 強制わいせつ罪は、13歳以上の男女に対し、相手方の反抗を著しく困難にさせる程度の暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。13歳未満の者に対してわいせつ行為をした場合は、暴行又は脅迫を用いなくても強制わいせつ罪が成立します。法定刑は、6月以上10年以下の懲役になります。 
わいせつ性については、「社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ない」とされています。
強制わいせつ事件では、暴行・脅迫の有無や被害者との同意があった、あるいは同意があるものと誤信していた(故意阻却)点が争いとなりやすいです。

(イ) 準強制わいせつ罪(刑法178条1項)は、人の心神喪失・抗拒不能に乗じ、あるいはこれらの状態にさせてわいせつ行為をした場合に成立します。
法定刑は、6月以上10年以下の懲役になります。

イ 強制性交等罪、準強制性交等罪、強制わいせつ等致死傷罪

(ア) 強制性交等罪は、13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交、口腔性交(以下、「性交等」という。)を行った場合に成立する犯罪です。
平成29年の刑法改正により、「強姦」という言葉が改められ、行為者に男女の区別がなくなり、性交の態様に肛門性交、口腔性交が加わり、法定刑が加重され、非親告罪となりました。
強制性交等罪における「暴行又は脅迫」は、相手方の犯行を著しく困難にする程度であることを要します。暴行又は脅迫があったか否かは、行為態様などが総合的に判断されます。
強制性交等罪では、そもそも性交等をしていない、暴行・脅迫はなかった、性交等の合意(和姦)または合意の誤信があったという点が争いとなりやすいです。
法定刑は、5年以上の有期懲役となります。

(イ) 準強制性交等罪は、人の心神喪失・抗拒不能に乗じ、あるいはこれらの状態にさせて性交した場合に成立する犯罪です。
 

ウ 監護者性交等罪、監護者わいせつ罪

監護者わいせつ及び監護者性交等罪は、18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力に乗じて、わいせつ行為や性交等をした場合に成立する犯罪で、強制性交等罪及び強制わいせつ罪に準じて処罰されます。平成29年刑法改正によって新設された規定です。
「現に監護する者」とは、現に18歳未満の者を監督し、保護している者をいいます。具体的には、実親や養親、それ以外の者であっても、子の世話をしており、生活全般にわたって監督・保護をしている者です。
「影響力があることに乗じて」とは、一般的・継続的に被監護者の意思決定に影響を及ぼしうる関係が存在する状況において、それを前提として性的行為が行われることをいいます。また、仮に被監護者が性的行為に承諾していたとしても、承諾それ自体が監護者の影響力に基づいてなされたものといえることから、これにより本罪の成立が否定されるわけではありません。
 

エ 対処法

これらの罪名は、非常に重い犯罪類型であるため、前科前歴がない場合であっても、実刑判決になる可能性がある犯罪類型です。
実際にこのような犯罪行為に加担してしまった場合には、被害者と示談を行うことが極めて重要となってきます。
しかし、性犯罪については、被害者の処罰感情が大きいことが多く、また、被害者が未成年者である場合には、被害者の親権者と示談が必要となり、より示談が困難となります。
当事務所では、これまで強制性交等罪や強制わいせつ罪における示談を成立させ、実刑相当事案において、執行猶予判決を獲得した実績が複数あります。
単純に示談を成立させるだけでなく、被害者様の処罰感情が軽減できるように被疑者の方の反省をしっかりと伝え、被害者様より「寛大な処分で構いません」という文言を入れてもらえるように努力致します。

(3) ストーカー、DV、児童虐待

ア ストーカー

ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、「つ きまとい等」、「電子メールの送信等」及び「ストーカー行為」を規制しています。

(ア) 「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し」、つきまとい、待ち伏せ、行動の監視、無言電話等の行為をすることをいいます。
つきまとい等については、警察本部長等は、被害者の申し出によりつきまとい等をした者が更に反復して当該行為をするおそれがある場合には、更に反復して当該行為をしてはならない旨の警告をすることができます(同法4条1項)。
さらに、公安委員会は、つきまとい等をした者が更に反復して当該行為をするおそれがある場合には、①更に反復して当該行為をしてはならないこと、②更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項を命ずることができます。
禁止命令等に違反した者は、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金になります(同法20条)。

(イ) 「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等を反復してすることをいいます(同条3項)。
ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(同法18条)。
禁止命令等(同法5条1項)に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金となります(同法19条1項)。

(ウ) 対処方法
昨今、ストーカー行為等については、捜査機関は厳しい対応を取る傾向にあります。
例えば、これまで交際関係にある方に対し、交際のもつれの延長線上であっても、相手方が連絡を拒絶するにもかかわらず、執拗に連絡を行ったような場合、逮捕されるようなこともありえます。
このようにストーカー行為等については、厳しい対応が取られますので、万一、このような行為を行ってしまった場合には、早期に示談の申し入れを行うことが必要です。
ストーカー行為に対しては、示談が成立した場合には、不起訴処分になる可能性は高いため、早期に示談を行うことが極めて重要です。
当事務所では、ストーカー規制法違反に事件に対する不起訴処分の獲得実績も多数ありますので、まずは当事務所長崎オフィスまでご相談下さい。

イ DV(ドメスティック・バイオレンス)

(ア) DVとは、「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多いです。    
DVの具体的な意味内容については、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)に規定されています。
本法1条1項によると、「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいいます。
DV防止法は、法律婚夫婦だけでなく、事実婚夫婦や離婚した元夫婦も対象となります。
「配偶者」には、事実婚の者、生活の本拠を共にする交際相手からの暴力も含まれますが、同居していない恋人は含まれません。
DVにおける「暴力」は、身体的暴力のみならず、精神的暴力、性的暴力を含みます。
なお、DV防止法では、暴力を受ける対象を女性に限定していないため、男性が被害者のDVも想定されます。

DVにあたる行為例
  • 身体的暴力→殴る、蹴る、押す、物を投げる、髪の毛を引っ張る、包丁を突きつける等
  • 性的暴力→セックスの強要、嫌がっているのにキスをする、サド・マゾの強要、妊娠・中絶を強要する、避妊に協力しない等
  • 精神的暴力→「バカ、アホ、能無し」「誰に飯を食わせてもらっていると思っているんだ」などと言う、大声で怒鳴る、無視をする、物を壊す、子どもや親兄弟に危害を加えると言って脅す等
  • 社会的暴力→家族や友人との交際を制限する、電話や手紙を細かくチェックする、仕事を辞めさせる等
  • 経済的暴力→生活費を渡さない等

(イ) DVの行為態様は、刑法上の暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強制わいせつ罪、殺人罪などの犯罪となるもののほか、刑法上の犯罪にあたるとまでは言えないグレーゾーンのものまでが含まれます。
DVが刑法上の犯罪にあたる場合には、警察署の刑事課に診断書等を持参の上、被害届を提出したり、刑事告訴することができます。
DV対策としては、警察本部長等による援助を求めることができます。警察官は、通報等により配偶者からの暴力が行われていると認めるときは、法令の定めるところにより、暴力の制止、被害者の保護その他の被害の発生を防止するための措置を講ずるよう努めなければなりません(DV法8条の2)。
具体的な措置としては、①被害者の状況に応じて避難その他の措置を教示すること、②被害者の住所又は居住を知られないようにすること、③被害防止交渉に関する助言、④110番緊急通報登録システムへの登録等があります。
また、配偶者暴力相談センター、NPO等への相談もできます。
さらに、DV対策として、裁判所による保護命令があります。
保護命令とは、被害者の生命又は身体に危害を加えられることを防ぐため、裁判所が被害者の申立てにより、身体に対する暴力や生命等に対する脅迫を行った配偶者に対し、一定期間、被害者又は被害者の子や親族等へのつきまとい等の禁止や被害者とともに生活の本拠地としている住居からの退去等を命じる裁判です。
保護命令の内容としては、①被害者への接近禁止命令、②被害者の同居の子への接近禁止命令、③被害者の親族等への接近禁止命令、④退去命令、⑤電話等禁止命令等があります。
保護命令に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(DV防止法29条)。

ウ 児童虐待

(ア) 児童虐待とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者をいう。)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。)について、児童の身体に外傷が生じ又は生じるおそれのある暴行を加える行為等をいいます。児童虐待にあたる行為として、児童を殴る・蹴る行為、児童にわいせつな行為をすること又はわいせつな行為をさせること、育児放棄、児童に対する著しい暴言等があります。
児童虐待防止法には、児童虐待に対して罰則規定がないので、児童虐待を理由として検挙されるものではなく、当該行為が刑法上の暴行罪、傷害罪、強制わいせつ罪等にあたる場合に検挙されることになります。

(イ) 児童虐待事案により逮捕・勾留された場合は、身体拘束からの早期開放を目指すことになります。
弁護人としては、加害者と被害者が速やかに一時的に別居するなど被害者の生命と身体の安全が確保されるよう環境を調整し、捜査期間に提出することが考えられます。  
  

エ 対策について

昨今、DVや児童虐待については、重く処罰される傾向にあります。
夫婦間の暴力や子供に対する行き過ぎた躾も暴力として逮捕されるケ
ースが増加しております。
よく逮捕された方からこれくらいの暴力でなぜ逮捕されるんだという質問を受けますが、些細な暴力と思っていても暴力であることには変わりなく、逮捕されるおそれがあります。
自分が暴力を行ったかもしれないと思う方は、早急に弁護士に相談の上、今後の対策について考えることをお勧めします。
また、夫婦間の暴力に関しては、早急に示談を行うことで不起訴処分になることがあるため、早期に行動することが重要です。
他方で、児童に対する暴力は、児童や他の親族等と話し合い、今後の子どもの生活への配慮が重要となってくるため、時間を要します。そのため、早期に行動を行い、環境整備などを行う必要があります。
DV問題や児童虐待問題でお悩みの方は、当事務所長崎オフィスまで、まずはご連絡下さい。

(4) 児童に対する犯罪(児童買春・児童ポルノ、青少年保護条例違反等)

ア 児童買春

(ア) 児童買春罪とは、児童買春をした場合に成立する犯罪です。
「児童」とは、18歳に満たない者をいいます(児童ポルノ法2条1項)。
「児童買春」とは、児童等(児童、児童に対する性交等の周旋をした者、児童の保護者又は児童をその支配下に置いている者)に対し、対償を供与して、児童に対し、性交等をすることをいいます。
性交時に被害児童を撮影したり、被害が複数となれば罪は重くなります。
なお、対償供与の約束がない場合は、青少年保護育成条例の違反となります。

(イ) 児童買春罪は、被害者の年齢を知っていること(知情生)が要件です。
知情生を争う場合、弁護人は、SNSでのやり取り、被害者の外見や言動等を詳しく聴取し、記録しておく必要があります。

(ウ) 児童買春罪は、通常逮捕されることが多いです。自首した場合は、身体拘束を回避できることが多いです。
被疑者が逮捕・勾留された場合、被疑者の誓約書、同居親族の身元引受書の提出、示談等により、身柄拘束からの早期釈放を求めます。
法定刑は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金になります。

イ 児童ポルノ

児童ポルノ所持・提供等罪(児童ポルノ法7条)は、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持・提供・製造した場合に成立する犯罪です。
「児童ポルノ」とは、児童による性交又は性交類似行為、児童の性的な部位が露出され又は強調される児童の姿態を、写真、電子的記録に描写したものをいいます(児童ポルノ法2条3項)。
具体的には、被疑者はSNSで親しくなったB女(15歳)に裸の写真を送るよう要求し、B女は上半身裸の写真を被疑者に送信した場合は、被疑者に製造罪が成立します。
児童ポルノを所持した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となり、提供したものは、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金となります。
被害者が逮捕・勾留された場合は、被疑者の誓約書、同居親族の身元引受書の提出、示談等により、身柄拘束からの早期釈放を求めます。
本罪においても、知情性(18歳未満であると知っていたこと)を争う場合があります。明らかに低年齢の児童を除けば、知情性を否定できる余地はあります。
  

ウ 青少年保護育成条例・児童福祉法違反

(ア)都道府県では、青少年保護育成条例ないし青少年保護(育成)条例(以下「育成条例」)を定めており、児童との淫行を処罰しています。
「淫行」とは、①性交・性交類似行為であって、青少年を誘惑、威迫、欺罔、困惑させる等心身の未成熟に乗じた不当な手段より行うもの、又は、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱うものをいいます。

(イ)また、児童福祉法60条1項、34条1項6号は、児童に淫行させる行為を処罰します。
「淫行させる行為」は、判例によれば、児童に事実上の影響力を及ぼして淫行を助長・促進させる行為をいい、児童との関係、助 長・促進行為の内容、児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容・動機・経緯、児童の年齢等を総合的に考慮して判断します。
淫行させる行為の例としては、児童に売春させるような行為(三者関係)ですが、保護者や教師が自ら児童の相手になって性交をする場合(二者関係)でも児童福祉法違反が成立するとされています。
児童福祉法違反の法定刑は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科となります。
児童福祉法違反で逮捕・勾留された場合、誓約書、身元引受書の提出、示談等の他、罪証隠滅の現実的可能性がないことを主張して、身体拘束の早期解放求めます。
示談については、被害者が未成年者であるため、親(法定代理人親権者)との交渉が原則です。
早期の示談を行うことで処分が大幅に軽減されることがあるため、まずは事件に関与してしまった方は、当事務所の長崎オフィスへご連絡ください。自動車を運転しない生活環境の整備も必要となります。

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