1 刑事事件の流れ
(1) 逮捕
逮捕とは、被疑者を警察署などで計72時間以内の身体拘束を行うことをいいます。警察官により逮捕された場合、48時間以内の警察官による取り調べを受け、その後、検察官へ送致されます。送致を受けた検察官は、24時間以内に取り調べを行います。
そして、捜査機関は、被疑者が身体拘束された時から72時間以内に、勾留請求するかを検討することになり、72時間内に勾留請求しない場合には、直ちに被疑者を釈放する必要があります。
逮捕後、すぐに取り調べを行われるため、すぐに面会に行き、今後の方針について話をしなければ、捜査機関により自白を強要される恐れがあり、また、手続きの流れがわからず不安を抱えることになります。
弁護士が被疑者と早期に面会を行うことで、被疑者の不安感を拭い、今後の方針について適切なアドバイスを行うことができます。
逮捕手続き期間中の72時間は、弁護士のみが面会を行うことができ、家族の方の面会はできません。弁護士が即日面会を行うことで当事者の状況を確認し、被疑者のみならずご家族の方への安心感を与えることができます。
(2) 勾留
ア 勾留の意味
検察官は、24時間以内に勾留の必要性の有無について判断を行い、必要がある場合には、勾留請求を行います。
勾留は、検察官の請求に基づき、裁判官が勾留状を発して行われます。勾留の目的は、被疑者の逃亡や罪証隠滅を防止する点にあります。その
ため、罪証隠滅や逃亡のおそれがないにもかかわらず勾留請求された場合には、弁護人は裁判官に対して、勾留請求を却下するように求め、勾留手続きを争うことができます。
勾留期間は、原則として10日間であり、やむを得ない事由があるときはさらに10日間の延長請求を検察官が行い、裁判官が決定することで勾留延長が認められます。
イ 勾留に対する準抗告
準抗告とは、裁判官の勾留に関する決定に対して不服がある者が、裁判所にその取消し・変更の請求をすることをいいます。準抗告の場合、罪証隠滅のおそれがないこと、逃亡のおそれがないことを主張する必要があります。
検察官の勾留請求に対しては、争うことができ、裁判官が勾留却下の決定を出すことで、逮捕期間の72時間以内のみで釈放されることになるため、勾留却下に向けて準備することが非常に重要となります。
逮捕後、勾留請求まで時間があまりないことからご家族が逮捕された場合などは、早期に弁護士事務所へご連絡いただき、勾留却下へ向けた準備をする必要があります。
ウ 被告人勾留
被疑者段階で勾留されていた者は、継続して起訴後も勾留されることが通常です。なお、被疑者段階において、検察官と十分に交渉の上、釈放を求め、在宅事件に切り替えられることもあります。
(3) 処分について
検察官は、勾留の満期の際、処分保留で釈放するか、起訴処分か、不起訴処分とするのかを決定します。起訴処分とは、正式な裁判を行うことを意味し、不起訴処分は、証拠不十分などから公訴提起をしない処分であり、被疑者に前科がつかずに事件が終了します。
なお、罰金刑がある類型の犯罪であり、被疑者が事件を認めている場合には、略式起訴という正式裁判を行わずに簡易な手続きにより罰金刑を科す処分がなされることもあります。
不起訴処分になることで、被疑者にとっては、前科を回避することができるため、非常に重要な意味があり、弁護人としては、勾留満期までの期間に被害者と示談交渉を行うなど、不起訴処分に向けての弁護活動が非常に重要です。
(4) 裁判
被告人が起訴された場合、裁判になります。
裁判において、被告人は、主に、有罪、無罪の主張を行い、その主張に向けてどのように法律構成を組み立てていくかを検討することになります。
勾留中の被告人に執行猶予ないし無罪判決がなされた場合、勾留状は失効するので、被告人は直ちに身体拘束から解放されます。保釈中の被告人が執行猶予判決を受けた場合も、勾留状が失効し、保釈決定も効力を失います。その後に、保釈保証金の還付を請求することになります。これに対して、保釈されていた被告人に対して実刑判決が行われた場合には、保釈は効力を失い被告人は直ちに収監されることになります。
なお、原審の裁判に不服がある場合には、控訴を行うことができますが、上述のように保釈されていた被告人は、実刑判決が行われた場合、保釈の効力を失うため、控訴審においても保釈を希望する場合には、控訴と同時に保釈請求を行うことが望ましいため、判決当日までに控訴の準備と保釈の準備を行っておく必要があります。